大腸憩室炎とは
「下腹部の決まった場所がずっとズキズキ痛む」「お腹の痛みと一緒に熱が出てきた」——このような症状でお困りではありませんか? それは、大腸の壁の一部が外側にぽこっと飛び出してできた小さなポケット(凹み)に、便のカスなどが詰まって細菌感染を起こす「大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)」の典型的な症状かもしれません。憩室(けいしつ)自体を持っているだけなら無症状で全く無害ですが、一度炎症を起こすと強い腹痛や発熱を引き起こし、悪化すると腸に穴が空いて腹膜炎という命に関わる状態に進行することもあります。「ただの腹痛や胃腸風邪だろう」と軽視せず、消化器の専門的な診断を受けることが必要です。
主な症状
- お腹が痛い・張る
腹痛が続く原因として、下腹部の特定の場所(日本人は特に右下腹部、欧米人は左下腹部)がズキズキと持続的に痛みます。 - 血便
憩室内の血管が破れると、お腹の痛みなしに突然大量の鮮血や暗赤色の血便が出る「大腸憩室出血」を引き起こします。 - 便潜血陽性
目に見える血便が出なくても、憩室からの微量な慢性出血によって検診の「便潜血」で陽性反応が出ることがあります。

原因と病態
大腸憩室炎は、現代の日本人に非常に増えている大腸の疾患のひとつです。
憩室ができる原因
食生活の欧米化による「食物繊維の不足」が根本にあります。食物繊維が足りないと便が硬くなり、それを送り出すために大腸が強く収縮するため、腸の内圧が高まります。その圧力に耐えかねて、大腸の壁の弱い部分(血管が通っている穴など)が外側へ袋状に飛び出してしまうのです。
炎症が起きるメカニズム
この飛び出したポケット(憩室)の中に、硬くなった便の塊(糞石)がすっぽりハマると、血流が悪くなって細菌が繁殖し、急性炎症を引き起こします。欧米人は左側の下腹部(S状結腸など)に多いですが、日本人は右下腹部(盲腸や上行結腸など)の憩室炎が多いという特徴があります。そのため、しばしば「急性虫垂炎(盲腸)」と症状が酷似し、鑑別が非常に重要となります。
今すぐ受診すべき危険なサイン
憩室炎のほとんどは軽症のうちであれば抗生物質の服用や絶食で治りますが、腹腔内で袋が破れると大変危険です。以下の危険なサインに気づいたら、速やかに当院、または救急医療機関を受診してください。
- 下腹部(特に右下、または左下)の痛みが持続的で、時間が経つほど強くなっている
- お腹が痛いだけでなく、38度以上の高い発熱や寒気がする
- 歩くときにお腹に響くような強い痛みがある、またはお腹を押してパッと手を離したときに激痛が走る(腹膜刺激症状)
- 吐き気や激しい嘔吐を繰り返している
- 大量の血便(憩室出血)が同時に現れた
当院での検査・診断方法
大腸憩室炎が疑われる場合、当院ではまず丁寧な触診でお腹の痛みの中心(圧痛点)を確認し、血液検査で白血球やCRPといった炎症反応の数値を正確に測定します。さらに、超音波(エコー)検査を行い、憩室の周りの腸管がどれくらい腫れているか、膿が溜まっていないかをその場で速やかに診断します。 炎症のピークにある急性期に大腸カメラを入れると、腸に負荷がかかり穿孔のリスクを高めるため基本的には禁忌ですが、炎症が完全に治まった数週間後に、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を必ず実施します。 これは、憩室炎が起きた場所のすぐ近くに「隠れた大腸がんや大きなポリープ」がないかを100%確実に除外するためです。
FAQ よくある質問
痛みが軽度で、熱もなく、水分や食事がしっかり摂れる軽症の段階であれば、自宅でのお粥などの消化の良い食事療法(または数日間の絶食)と、当院から処方する抗生物質の内服治療で十分に完結できます。ただし、炎症数値が非常に高い場合や、腹膜炎の兆候がある場合は、連携する病院へ入院加療(点滴治療)の紹介を行います。
残念ながら、一度大腸の壁にできてしまった憩室のポケット自体を薬で消したり、元通りに平らにしたりすることはできません。そのため、再発を防ぐためには、日頃から十分な水分と食物繊維(野菜、きのこ、海藻など)を摂取し、便秘を根本から予防して大腸の内圧を上げない生活習慣を維持することが唯一の対策となります。
この記事の監修医師

田園調布ステーションクリニック
院長 鈴木 直人
- 昭和大学医学部 卒業
- 日本消化器外科学会 専門医・指導医

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